「そろばんを習わせるべきか迷っている」「本当に効果はあるの?」と悩む親は多いです。そろばんは計算力向上のほか、集中力や忍耐力を鍛えられるメリットがありますが、デメリットもあります。この記事では、そろばんを習うメリットとデメリット、向いている子どもと向いていない子どもの特徴を詳しく解説します。
記事を読めば、子どもがそろばんを習うのに適しているかどうか判断することが可能です。
そろばんを習うデメリット
そろばんを習うデメリットは、以下のとおりです。
- 習得に時間がかかる
- 筆算が苦手になる可能性がある
- 教室や検定の費用がかかる
- 字が雑になる
- 論理的思考力や問題解決力には直結しない可能性がある
習得に時間がかかる
そろばんの習得には時間がかかります。基本的な操作方法を身に付けるだけでも、数か月から1年程度の練習期間が必要です。珠算式暗算(頭の中でそろばんを操作する計算方法)を習得するには、さらに時間がかかります。小学1年生で始めた場合、1桁の足し算・引き算ができるようになるまでに約半年かかります。
2桁の計算ができるまで1年以上必要です。高学年になってから始めると、より多くの時間を要します。上達のスピードには個人差があり、同じ期間練習しても成果に差が出ることも多いです。子どもによっては挫折してしまう可能性もあります。そろばんを習わせる際は、長期的な視点で取り組む覚悟が必要です。
筆算が苦手になる可能性がある
そろばんに慣れると、学校の筆算で混乱することがあります。そろばんは百の位から、筆算は一の位から始めるためです。358+276という計算をする場合を例に見てみましょう。そろばんでは「300+200=500」「50+70=120」「8+6=14」と計算します。
筆算では「8+6=14」「5+7=12」「3+2=5」と計算します。そろばんに慣れた子どもは、筆算の手順を面倒に感じたり、途中式を書くのを省略したりしがちです。学校のテストでは途中式を書かないと減点されることがあるため、そろばんと筆算の両方をバランスよく学ばなければなりません。
保護者や指導者は、子どもがそろばんと筆算の違いを理解し、適切に使い分けられるよう支援する必要があります。
教室や検定の費用がかかる
そろばん教室に通う場合、月謝や教材費、検定料などの費用がかかります。具体的な費用の目安は、以下のとおりです。
費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
月謝 | 4,000~8,000円 | 教室や地域により異なる |
教材費 | 1,000~3,000円 | 入会時や級が上がる都度必要になる |
検定料 | 1,000~3,000円 | 級によって異なる |
そろばん代 | 2,000~5,000円 | 入会時に必要 |
上記の費用に加えて、送迎の交通費や時間も考慮する必要があります。級が上がるにつれて検定の回数が増えたり、特別レッスンが必要になったりすることもあります。そろばんを習わせる際は、長期的な費用計画を立てることが大切です。
字が雑になる
そろばんの練習を重ねるうちに文字を書く際の丁寧さが失われ、字が雑になってしまうことがあります。そろばんの計算では速さが重視されるため、数字を素早く書く習慣がついてしまうからです。そろばん検定では、制限時間内に多くの問題を解く必要があります。
1級の検定では、60秒以内に10問の計算をこなさなければなりません。時間的制約の中で練習を重ねると、速さを優先するあまり、文字を丁寧に書く習慣が失われます。字の乱れは、学校の授業やテストでも問題になります。漢字の書き取りや作文などでは、丁寧な文字で書くことが必要です。
そろばんの練習と並行して書写の練習を行うなど、バランスの取れた指導が必要です。保護者は子どもの文字の変化に注意を払い、必要に応じて対策を講じましょう。
論理的思考力や問題解決力には直結しない可能性がある
そろばんは計算力の向上には効果的ですが、論理的思考力や問題解決力の育成には直接的につながりにくいです。そろばんの学習は主に計算の反復練習が中心であり、複雑な問題を分析したり、新しい解決方法を考えたりする機会が少ないです。
「1個80円のりんごを5個買うと、いくらになるか」という問題は、そろばんで素早く計算できます。しかし、応用問題には対応が難しいです。図形の問題や文章題の読解など、計算以外の数学的スキルの向上にはつながりにくくなります。
そろばんだけでなく、さまざまな種類の算数問題に取り組むなど、バランスの取れた学習が必要です。
そろばんを習うメリット
そろばんを習うメリットは、以下のとおりです。
- 暗算力が向上する
- 数の概念がしっかり身に付く
- 集中力がつく
- 忍耐力・継続力が養われる
- 自信がつく
暗算力が向上する
そろばんを習うと暗算力が大幅に向上します。珠算式暗算を習得することで、頭の中でそろばんを操作して計算できます。日常生活のさまざまな場面で素早い計算が可能です。買い物の際のお釣りの計算や、料理の材料の分量調整などを瞬時に行えます。学校の算数の授業でも、計算問題を素早く解くことが可能です。
そろばん経験者の中には、3桁同士の掛け算を数秒で計算できる人もいます。暗算力の向上は脳の活性化にもつながります。計算を繰り返し行うことで、脳の前頭前野が活発に働くようになり、集中力や記憶力の向上にも効果的です。
そろばんで培った暗算力は、学習面だけでなく日常生活のさまざまな場面で役立つ重要なスキルになります。
数の概念がしっかり身につく
そろばんを習うことで、数の概念をしっかりと理解できます。数を具体的な珠の動きとして捉えるためです。数の大きさや構造を視覚的に理解するため、抽象的な数の概念を具体的なイメージとして捉えられます。そろばんでは1の位から順に上の桁に進んでいくため、位取りの概念も自然に身に付きます。
5と5で10になるという十進法の仕組みも、そろばんの構造を通じて理解することが可能です。数の基本的な概念の理解は数学の基礎です。そろばんでは億の位まで扱うため、大きな数字にも抵抗がなくなります。日常生活で大きな数字を見たり聞いたりしても、大きさを実感として理解できます。
1億円という金額を見たとき、そろばんを習った子どもは10万円が1万個あるというイメージを持ちやすいです。そろばんは数の概念を具体的に理解するうえで、とても効果的な道具と言えます。
集中力がつく
そろばんは、計算力だけでなく集中力を鍛えるためにも有効です。計算を行う際、数字や珠の動きを一つひとつ丁寧に確認しながら進める必要があり、高い集中力が求められます。手と目を連動させてミスを防ぐために、常に集中した状態が必要です。
そろばんでは、計算過程が目に見える形で表現されるため、ミスにすぐ気づくことができ、修正することで注意力も養われます。難易度の高い問題に取り組むほど顕著です。結果として、学校の授業や日常生活においても、そろばんで培った集中力が役立つ場面が増えます。
忍耐力・継続力が養われる
そろばんの学習は、忍耐力と継続力を養う良い機会になります。上達には時間がかかるため、地道な練習を積み重ねる必要があるからです。毎日コツコツと練習を続けることで、目標に向かって努力し続ける力が身に付きます。
級を上げるために何度も同じ問題を解いたり、難しい計算に挑戦し続けたりする経験は、忍耐力を養うのに効果的です。最初はできなかった計算ができるようになる喜びを味わうことで、努力の大切さを学びます。忍耐力と継続力は、そろばん以外の場面でも役立つことは明らかです。
学校の勉強や将来の仕事など、長期的な目標に向かって頑張り続ける力になります。テスト勉強を最後まであきらめずに続けたり、難しい課題に粘り強く取り組んだりできるのもメリットです。
自信がつく
そろばんの上達は、子どもの自信につながります。できなかったことができるようになる経験を重ねることで、自己肯定感が高まるからです。計算スピードが上がったり、難しい問題が解けるようになったりする過程で、自分の成長を実感できます。
級を上げるたびに達成感を味わったり、競技大会で良い成績を収めたりすることで、自信が育まれます。最初は5分かかっていた計算が1分でできるようになるなど、目に見える形で成果が表れるのもそろばんの特徴です。自信がつくと、算数だけでなく他の教科や日常生活でも積極的に行動できます。
授業中に自信を持って発言したり、新しいことに挑戦する勇気が出たりします。そろばんで培った自信は、子どもの成長を支える大切な土台です。
そろばんに向いていない子どもの特徴
そろばんは多くの子どもにとって有益な学習ですが、すべての子どもには適していません。子どもの性格や特性によっては、そろばんの学習が苦痛になります。以下では、そろばんに向いていない子どもの特徴を3つ紹介します。
集中力が持続しにくい
集中力が持続しにくい子どもは、そろばんの学習に向いていません。そろばんの練習には長時間の集中力が必要だからです。1時間の授業中、同じような計算を繰り返し行う必要があります。集中力が途切れやすい子どもにとって、単調な作業の繰り返しは苦痛です。集中力が持続しにくい子どもの特徴は、以下のとおりです。
- 飽きることが早い
- 1つのことに集中できない
- 落ち着きがない
- 周りの音や動きが気になり集中できない
- 指示を最後まで聞けない
集中力が持続しにくい子どもがそろばんを習う場合、短い時間から始めて徐々に練習時間を延ばすなどの工夫をしましょう。ゲーム感覚で楽しく学べる教材を活用したり、定期的に休憩を取り入れたりすることで、集中力の持続を助けられます。子どもの特性に合わせた学習方法の工夫が大切です。
数字や計算に興味がない
数字や計算に興味がない子どもは、そろばんの学習に向いていない傾向があります。そろばんは基本的に数字を扱う学習なので、興味がないと意欲的に取り組むのが難しくなるからです。数字や計算に興味がない子どもの特徴は、以下のとおりです。
- 算数の授業を嫌がる
- 計算問題に興味がなくなる
- 数字を見ると退屈そうにする
- 数字を使うゲームを避ける
- お金の計算がつまらないと感じている
数字や計算に興味がない子どもにそろばんを無理に習わせると、学習意欲の低下につながります。代わりに、子どもの興味に合わせた学習方法を選ぶ方が効果的です。数字を使った楽しいゲームを取り入れるなどの工夫を用いて、数字や計算への興味を徐々に育てる必要があります。
継続的な努力ができない
継続的な努力が苦手な子どもは、そろばんの学習に向いていない傾向があります。そろばんの上達には長期的な練習が必要なので、コツコツと努力を重ねることが大切だからです。継続的な努力が苦手な子どもの特徴は、以下のとおりです。
- すぐに飽きてしまう
- 長期的な目標を立てられなくなる
- 失敗するとすぐに諦めてしまう
- 毎日の練習が続かなくなる
- 途中で投げ出したくなる
継続的な努力が苦手な子どもにそろばんを習わせる場合は、短期的な目標を設定し、小さな成功体験の積み重ねることが大切です。1週間で10問解けるようになる、といった具体的で達成しやすい目標を立てます。努力を続けることの大切さや楽しさを実感できるよう、保護者や指導者が適切なサポートをすることも重要です。
そろばんに向いている子どもの特徴
そろばんの学習に適している子どもには、いくつかの共通した特徴があります。以下では、そろばんに向いている子どもの3つの主な特徴について説明します。子どもがそろばんを習うか迷っている場合は、参考にしてください。
数字や計算が好き
数字や計算が好きな子どもは、そろばんの学習に向いています。数字を見るとワクワクしたり、計算問題を解くのが楽しいと感じたりする子どもは、そろばんの練習にも意欲的に取り組めるからです。数字や計算が好きな子どもの特徴は、以下のとおりです。
- 算数の授業を楽しみにしている
- 計算ドリルを進んでやる
- 数字パズルや数独が楽しいと感じている
- お金の計算が得意である
- 数字を使ったゲームを好んでいる
数字や計算が好きな子どもは、そろばんの学習を通じてさらに数学的な能力を伸ばせます。珠算式暗算を習得すると、より複雑な計算も頭の中で素早く行えます。数字に対する直感力も磨かれ、将来的には数学や科学の分野で活躍する可能性も高いです。
集中力がある
集中力がある子どもは、そろばんの学習に適しています。そろばんの練習には長時間の集中が必要で、計算を繰り返し行う必要があるからです。集中力が高い子どもは効率良く練習を進められ、上達も早くなります。集中力がある子どもの特徴は、以下のとおりです。
- 1つの作業に没頭できる
- 長時間座って勉強できる
- 指示を最後まで聞ける
- 細かい作業が好きである
集中力がある子どもは、そろばんの学習を通じてさらに集中力を高められます。集中力が高い子どもはすぐにそろばんを習得でき、日常生活でも素早い情報処理能力を発揮可能です。学校の授業や将来の仕事など、さまざまな場面で活きる力を身に付けられます。
挑戦することが好き
挑戦することが好きな子どもは、そろばんの学習に向いています。そろばんは級や段位があり、次々と難しい課題に挑戦していく必要があるからです。新しいことに挑戦する意欲がある子どもは、そろばんの学習を楽しみながら上達します。挑戦することが好きな子どもの特徴は、以下のとおりです。
- 新しいことに興味を持てる
- 失敗を恐れず取り組める
- 目標に向かって頑張れる
- 難しい問題に取り組むのが好きである
- 競争心がある
挑戦することが好きな子どもは、そろばんの学習を通じて自信と達成感を得られます。級が上がるたびに喜びを感じ、さらに上級を目指すモチベーションにつながります。競技大会に参加して他の子どもたちと競い合うことで、努力の成果を実感することも可能です。
まとめ
そろばんは計算力や集中力を高める一方で、習得に時間がかかるデメリットもあります。子どもの特性や興味に応じて、そろばんが合うかどうか見極めることが大切です。数字が好きで集中力がある子どもには、特におすすめの習い事です。
そろばんを始める際は、子どもの様子を見ながら無理のない範囲で続けましょう。
» そろばんは何歳から始める?習うメリット・デメリット